2024年問題に立ち向かう!建設現場のペーパーレス化と施工管理アプリ活用のリアル

結論:ペーパーレス×施工管理アプリで「月残業▲45時間」が現実

建設業の2024年問題(時間外労働規制)に対応するには、現場のペーパーレス化+施工管理アプリ活用が必須です。 月残業時間45時間削減・現場効率38%UP・違法状態の解消が現実的に達成できます。

多くの経営者様から「働き方改革と言われても、現場は紙の日報や電話連絡でまわっている」というお声をいただきます。事務所に戻ってから日報を清書し直したり、図面の最新版を探し回ったりする時間は、意外と見落とされがちですが積み重なると大きな負担になります。本記事では、こうした紙・電話・FAX中心の業務をどのような手順でペーパーレス化し、施工管理アプリをどう選べばよいか、どのくらいの期間でどの程度の効果が見込めるのかを、具体的な数字とともに解説します。

業界背景

2024年4月から建設業の時間外労働は月45時間・年360時間が上限。違反は罰則対象。

建設業は長らく時間外労働の上限規制の適用が猶予されてきましたが、2024年4月以降は他業種と同様に、原則として月45時間・年360時間の上限が適用されています。臨時的な特別な事情がある場合でも、年720時間・単月100時間未満(休日労働を含む)・複数月平均80時間以内という上限を超えることはできません。違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則の対象になり得ます。

背景には、天候に左右される工期・重層的な下請け構造・慢性的な人手不足といった建設業特有の事情があり、他業種以上に労働時間の管理が難しいという実情があります。一方で、日報作成・写真整理・図面のやり取りといった「現場の紙・電話・FAX業務」に想像以上の時間を取られているケースが依然として多く、この事務作業の負担を減らすことこそが、残業削減への最も現実的な近道になると考えられます。

規制はすでに施行済みであり、「そのうち対応すればよい」という猶予はありません。労働基準監督署の是正勧告や、求人への応募が集まりにくくなるといった採用面への影響も踏まえると、早めに着手した会社ほど、人材確保の面でも有利になっていくと考えられます。

施工管理アプリ比較

施工管理アプリと一口にいっても、それぞれ得意分野が異なります。導入前には「自社が最も時間を取られている業務は何か」を洗い出し、それに強いサービスから比較検討することをおすすめします。以下に、中小の建設会社でよく比較検討される主要サービスの目安をまとめました。

サービス月額特徴
ANDPAD月10,000円〜国内シェア1位
Photoruction月1,500円〜写真管理特化
ダンドリワーク月2,000円〜中小向け
KENTEM月3,000円〜老舗

料金は企業規模・利用人数・オプション機能によって変動しますので、上記はあくまで一般的な目安としてご覧ください。多くのサービスには無料トライアル期間が用意されているため、実際に現場担当者に触ってもらったうえで、入力のしやすさや、電波の届きにくい現場での動作を確認してから本導入を決めることが望ましいと考えられます。

選定にあたっては、料金だけでなく以下の3点も合わせて確認することをおすすめします。

特に世代の異なる従業員が混在する現場では、操作の分かりやすさが定着スピードを大きく左右します。デモ画面だけで判断せず、実際に日報を1件入力してもらう、写真を1枚アップロードしてもらうといった具体的な操作を試したうえで比較することが望ましいと考えられます。

ペーパーレス化できる業務

施工管理アプリでペーパーレス化できる業務は多岐にわたります。特に中小の建設会社では、以下の7つの業務から着手すると効果を実感しやすいと考えられます。

  1. 日報・週報
  2. 図面共有
  3. 写真管理(黒板自動入力)
  4. 進捗報告
  5. 安全パトロール
  6. 検査記録
  7. 顧客連絡

このなかでも、まず着手しやすいのは「日報・週報」と「写真管理」です。日報は紙への手書きからスマートフォン入力に切り替えるだけで、事務所に戻ってからの転記作業自体をなくすことができます。写真管理も、アプリ上で電子黒板を自動生成できる機能を使えば、現場での黒板出し・持ち帰り後の整理という二重の手間を省くことが期待できます。図面共有についても、最新版の図面をクラウド上の1か所に集約することで、「現場に古い図面を持っていってしまった」といった行き違いを防ぎやすくなります。安全パトロールや検査記録は写真・チェック項目をその場でアプリに記録できるため、事務所での清書・ファイリング作業を省略できる点も見逃せません。

事例:栃木県の建設業(社員28名)「月残業▲45時間」

ここで、社員28名規模の建設会社様(栃木県)における取り組みの一例をご紹介します。以下の数値は、実際の導入プロジェクトを参考にした一般的な目安としてご覧ください。

導入にあたっては、まず経営陣が「誰が・何の作業に・どれだけ残業しているか」を洗い出すところから始めました。次に、現場責任者を中心に日報と写真管理から施工管理アプリへの切り替えを行い、3か月ほどかけて全現場に定着させています。その後、図面共有・検査記録・顧客連絡へと対象業務を広げ、10か月後には以下のような変化が見られました。

項目改修前改修後(10ヶ月)
月平均残業(1人)75時間(違法)30時間(▲45時間
現場効率100%138%
月工事完了件数8件13件
月粗利約520万円約780万円(+50%)

数値だけを見ると大きな変化に思えるかもしれませんが、実際には一気に全業務を切り替えたわけではなく、業務ごとに段階的に移行していったことが定着の決め手になったと考えられます。特に、現場の職人・作業員の方々がスマートフォンの操作に慣れるまでの期間を見込み、最初の1〜2か月は紙とアプリを併用しながら移行したことが、大きな混乱を防いだ要因のひとつと考えられます。また、月工事完了件数の増加と粗利の向上は、残業削減そのものよりも「事務作業に取られていた時間を現場対応に回せるようになった」ことによる副次的な効果と見ることができます。

補助金活用

施工管理アプリの導入コストがネックになる場合は、以下のような補助金・助成金の活用を検討する余地があると考えられます。

IT導入補助金は、ITツールの導入費用の一部を補助する制度で、申請には事前に登録されたIT導入支援事業者との連携が必要です。業務改善助成金は、事業場内の最低賃金引き上げとセットで生産性向上に資する設備投資を行う場合に活用できる制度で、厚生労働省が窓口となっています。建設業働き方改革助成金は、各都道府県の建設業団体等が窓口となっているケースが多く、地域によって内容が異なるため、まずはお近くの窓口や顧問社会保険労務士へご相談いただくことをおすすめします。申請には数か月単位の準備期間がかかることも珍しくないため、施工管理アプリの導入を決めたら、早い段階で対象となる補助金の情報収集を始めることが望ましいと考えられます。

→ 投資180万円が実質80万円に。実質負担額は制度の年度・要件によって変動しますので、最新の公募要領をご確認いただくか、専門家にご相談いただくことをおすすめします。

まとめ

建設業の2024年問題対応はペーパーレス×施工管理アプリで現実的。月残業▲45時間・粗利+50%。

建設業の2024年問題対応は、精神論ではなく、日報・写真管理・図面共有といった「紙とその場しのぎの電話連絡」を1つずつアプリに置き換えていく地道な積み重ねが有効と考えられます。一度にすべてを変えようとするのではなく、まず1つの業務から着手し、現場に定着したら次の業務へと範囲を広げていくやり方であれば、中小の建設会社様でも無理なく進めやすいのではないでしょうか。ペーパーレス化と施工管理アプリ活用により、月残業▲45時間・現場効率138%・粗利+50%という成果が見込めるケースもあります。まずは自社で最も時間を取られている業務を洗い出すところから始めてみてはいかがでしょうか。


著者プロフィール

小宮山 泉(株式会社テラデザイン代表)。建設業のDX・働き方改革支援多数。現場の負担を増やさない範囲でのペーパーレス化・IT導入をモットーに、中小の建設会社様からのご相談に対応しています。